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ペンと羽根と、ペンライト

バドミントン歴10年のイエローが、バドミントンに関する様々な情報を中心に発信するブログです。コーチの依頼も受け付けています。

バドミントンの用語が統一されていない問題

突然ですが、バドミントンの用語ってあんまり統一されていないですよね。今日はそんな話。

用語の不一致はおこるもの

同一あるいは類似の事象を表すのに複数の言葉を用いうる状況のとき、どの言葉を用いるかによってその人の価値判断が垣間見えたりします。

  • 「理性」というか「悟性」というか
  • 「東側諸国」というか「共産主義諸国」というか
  • 「日本語」というか「国語」というか

そういう観点から見ると「用語を統一すべき」というのは自明のことではありません。言語によって事象の切り分け方が変わるからです。

言葉以前の現実は混沌とした連続体であって、私たちは自国語の意味体系のおかげで、この連続体の適当な個所個所に境界線を画することができます。ところが、言語によって意味体系が異なるのですから、言語が変れば区切り方も変ってくるのは、当然でしょう。

引用元:丸山圭三郎『言葉とは何か』94頁、ちくま学芸文庫、2008年。

ただ、やっぱりプレーヤーにとって有益であることを最優先に考えるべきだし、それから指導者の間にも共通貨幣があったほうがいい。

できれば統一したほうが何かとメリットがあると思うわけです。

というわけで、これがややこしいよってのを以下で幾つか挙げていきます。

フットワーク?トラベリング?

「フットワーク」が一般的ですが、どうも英語圏では「トラベリング」が一般的な様子。たとえばBWFの公式指導マニュアル(BWF Coaches Manual Level1)では “Movement Skills” という章が設けられています*1 。そこでは「移動」という意味でtravelingが使われています。

Movements (split-step, travelling, lunge, jumping)

引用元:BWF Coaches Manual Level1, p.49

  • リアクションステップのところでスプリットステップ(足を開く)
  • 最後の一歩でランジ
  • 足の入れかえや飛びつきでジャンプ
  • それ以外のところがトラベリング

…というところでしょうか。この辺のことは別エントリーにて。

とりあえず今は「トラベリング」って言葉があるってことと、それが指す内容だけハッキリしていればOKかと。

そういえば、この前バドミントンの公認上級指導員の講習を奈良県で受けたときにも、やはり講師の先生が「トラベリング」という言葉を使っていました。

英語圏で使われているから正しい、なんていうつもりは毛頭ありませんが、この不統一は念頭に置いておいて損はないかと思います。

トラベリング ⊂ フットワーク

…なのか?(ハッキリ答えが出ないまま次へ)

ホームポジション?プレイングセンター?

「ホームポジション」はコートの真ん中のこと。でも打ったあとに毎回コートの真ん中まで戻ることはありえないですよね。

そこで「プレイングセンター」という考え方の登場です(プレイングセンターとは相手の返球に最も対応しやすい場所のこと)。

自分から攻撃的にネット切ったら次の返球をネット際に詰めて準備しておくだろうし、相手のバック奥に追い込んだら相手のバック側に一歩寄せて準備するはず。

先人のいい記事見つけたのでリンクはっておきます。

>参考:プレイングセンター|バドミントン・メモ

ところで、指導の現場では「プレイングセンター」の内容を指して「ホームポジション」と呼んでいることも多々見受けられます。

かくいうぼくも、良くないとはわかっていながら「プレイングセンター」があまりにも他のプレーヤーに馴染みがないので「ホームポジション」と呼んでしまうこともしばしば。

できれば個人的には「プレイングセンター」を浸透させたい。。

ミス?エラー?

不要な失点を指して「ミス」という言葉がよく使われますが、「エラー」って聞くこともときどきあります。

以下のブログによると、「偶発的もしくは心理的な要因によっておきる動作」がミス、「技術的な理由で起きるショット」がエラー。

>参考:ミスかエラーか考えたことがある?|神戸の本格的バドミントン教室「セカンドゲーム」

テニスだとどっちも「エラー」ですね。forced error とunforced error とが区別されています。

forced は「強いられた」エラーってこと。相手の強烈なスマッシュが返球できなかったら forced error です。

unforced は「強いられていない」エラーってこと。以下で紹介するテニスのサイトから引用すると「相手のショットによってミスをさせられた訳ではないミスショット(自分に原因があるミスショット)」だそう。

>参考:アンフォーストエラーの正しい意味とよくある3つの誤解|LGA-BLOG

真っ先に浮かぶのは「凡ミス」だけど、そうじゃないのも含まれます。詳しくは上のリンク先を見てもらうとして、ここで肝心なのは「テニスではエラーの種類が公的に区別されている」ということ。じゃあバドミントンは…?

これらは一例ですが「ミス」「エラー」はバドミントンの場合、人によって定義がバラバラ。公式記録も別にないですよね。

スマッシュに限定すれば、winner, unreturned, returnedなどがあるものの、BWFスーパーシリーズを見ていても、ゲームが終わるごとにunforced error の数が少なくとも視聴者に向けて表示されたりはしません。

テイクバック?ラギングバック?

テイクバックは、利き腕を引いてくること。肘を引いてくるヒッティングの予備動作。以下にとてもわかりやすい説明がありました。

>参考:負のスパイラル【テイクバック動作】|バドミントン飯野佳孝イズム

対するラギングバック lagging back は、ラケットが「遅れて」出てくる現象のこと。「タイムラグ time lag」とかの"lag"ですね。

人体を構成するたくさんの骨は関節でつながっています。結果、身体は動く鎖になっている。こういうのを運動鎖と言うんだそう。

運動鎖は、身体の中心部の近くで前方への運動が起きると、その末端ではどうしても後方に向かう運動を生じる。後方に遅れた末端はやがて中心部の運動に追いつき、さらに加速されながらここを追い越して行く。この運動、鞭運動とも呼ばれる。

引用元:阿部一佳・渡辺雅弘『バドミントンの指導理論1』7頁、日本バドミントン指導者連盟、2008年。

バドミントンで言えば、中心部(腰)が回って、それに引っ張られて上腕、前腕、ラケット…と、末端部分にむけて連動して動く。

「鞭のように」ってよく聞くけど、ぼくは鞭がどんなものなのかあんまりイメージできないので今までピンときてなかったんですが、「運動鎖」って聞くと明快でした。

ラギングバック、ある程度以上のプレーヤーであれば必ずと言っていいほど無意識に使っていることでしょう。スロー映像をどうぞ。

ぼく自身はオーバーヘッドストロークのフォームがまだ「お手本のよう」だと言えるレベルからは程遠い。

ただ、この「ラギングバック」を知ってからずいぶんと視界がひらけました。改善すべき方向性が1つ見えたな、というやつ。

あと「肘で円を描くように」と指摘するとわりと改善が見られます。ネタ元は以下のブログ。

>参考:バドミントンのラギングバックのコツ|片山卓哉のブログ ~コンディショニングルームKATAYAMA~

用語を統一できる日はくるのか

競技規則なら用語の統一のための「権威」とも言うべき、文献があるわけですよね。つまりルールブック(規程集)です。

しかし指導用語となるとなかなか統一的な言葉を作ることは難しいのかもしれません。

そしてさらに難しいのは、その用語が指導の現場に浸透するまでの過渡期が必ず一定期間あるということ。

同一の事象なのに指導者によって違う言葉を使っていたらプレーヤーが混乱しそうです。つまりぼくが明日からいきなり「プレイングセンター」と言っても、小学生の頭には「??」が飛び交うことは容易に想像できます。

にもかかわらず、やはり用語はある程度統一を図るべきでしょうね。

日本バドミントン指導者連盟なんてものが存在しているので、できればそういうところが主催している講習会などに参加して指導者間の共通貨幣が作られるといいなとは思います。

あと、こうして記事にまとめてみて、自分自身が勉強不足すぎてやばいってことがわかりました()

*1:BWF Coaches Manual Level1, pp.51-72