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「国際大会」として見るWBC2017、課題もポジ要素もあるんだよ

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アローラ!イエロー(@inahime_poke)です。

前回の記事では、日本代表に絞ってWBCのことを書きました。

今回は国際大会としてのWBCを見てみましょう。ぼくはWBCが国際大会として順調に育ってきていると思います。

地域的な広がりと熱狂

野球の母国であるアメリカ合衆国はもちろんのこと、中南米、東アジア、オーストラリアなどでは従来から盛んでした。いずれもアメリカに関わりの深い地域と言えそうですw

それに加えて、オランダ、イタリア、さらに予選で惜しくもイスラエルに負けたイギリスなども含めて、ヨーロッパでの広がりも確実に見えてきています。

オランダは、ベネズエラのすぐ近くにあるアンティル諸島(特にキュラソー島)からたくさんのメジャーリーガーを輩出している一方で、バンデンハークのようなオランダ本土出身の選手の中にも優れた選手がいます。イタリアもそうですよね。前回大会では2次ラウンドまで進み、今大会でもメキシコに打ち勝つなど、存在感を見せています。

それから後述するイスラエル。どこソースだったかちょっと忘れましたが、WBCの放送がある国の数は80をこえているそうですよ。意外と盛り上がってる。

地域的な広がりはもちろんのこと、もともと盛んだった国でWBCに対する熱が上がってきているということも忘れてはならない。

前回大会ではドミニカ共和国とプエルトリコの決勝戦でした。この試合、ドミニカ国内では決勝戦の視聴率が45.52%、プエルトリコでは、国内テレビ4局の合わせて平均64%だったというから驚きです*1

サッカーとかに比べるとちょっと寂しいかもしれないけれど、その他の競技と比較しても引けを取らない規模の国際大会になってくるんじゃないかと思います。少なくともバドミントンでここまで国際大会が多くの国で盛り上がるかというと正直微妙なところ。

NPB助っ人はすごい人が多かった

バレンティン、バンデンハークといったオランダ選手や、レアード、アマダー、メンドーサのようなメキシコ選手など、NPBに助っ人としてやってきているプレーヤーが他国の代表チームの主力になっているのを見ると、NPBに来ている外国人助っ人のレベルって結構高かったんだなってことがわかります。

他者性の話ですね。国際大会を通じてこそ、日本の野球のレベルがわかる。海外の野球を知らない解説者が「日本の野球のレベルは~」って騒いでるよりも、こういう他国との比較のほうがはるかに雄弁に、そして説得力をもって語ってくれます。

日本のプロ野球のレベルは「3Aより上で、メジャーより下」って言われることがしばしばありますが、こういう国際大会を見ていると、まあ大体そんな感じなのかなーと思いますよね。

MLBが「アメリカ人の野球リーグ」ではないように、NPBもそろそろ「日本人の野球リーグ」を脱してもいいんじゃないかって思ったりします。つまり助っ人枠をもうちょっと増やしてもおもしろいんじゃないかなってこと。

…これは賛否わかれそうだけど、日本が「第2のメジャーリーグ」としてオープンな場になるのもおもしろそうじゃない?

イスラエルはアメリカの2軍ではない

歴史学ゼミ卒業生のわたしですが、歴史学を少し学んでいると必ず出くわすのが「ディアスポラ」です。ユダヤ人を語る上でディアスポラを欠かすことはできません*2

ぼくは最初のころ「イスラエルなんてアメリカの2軍、アメリカの傀儡でしょ」ぐらいに思ってた。でもある記事を見つけて以来、この人たちは生活基盤こそアメリカにおいているものの、「イスラエル」「ユダヤ」を背負って戦ってるんだなってことがよくわかりました。

代表チームは、WBCの予選終了後にイスラエルを訪れ、現地の野球場に足を踏み入れている。そこはかつてプロ野球リーグが行なわれていた場所だ。このイスラエル野球の聖地ともいえる「エレツ・イスラエル」に赴いたことで、結束力はより高まった。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170315-00010002-sportiva-base

うーん、そうですね。在住、在職、在学以外にふるさと出場を認める国体や駅伝みたいなもの…でしょうか。生活の拠点がどこであれ、心のふるさとがイスラエルにあるからこそ、イスラエルの代表選手として出ているってことだと思うんです。

かつて、1年だけMLB主導でイスラエルにもプロの野球リーグがあったそうですね。この大会をきっかけにイスラエルにも野球の浸透が進んでいけばいいなー、なんて思います。

実はちゃんとイスラエル本国でもニュースになっているみたいで、イスラエルの首相も快進撃にウキウキでしたw

英訳すると、こんな感じ。

Israel successfully baseball team makes an amazing journey world championships in South Korea these days. We are all with you!(※Google翻訳)

また、日本戦で先発し、5回を無失点に抑えたザイド投手は日本でもプレーしてみたいと言っているそう。ぜひ見てみたい。

ルール面の整備が課題ありすぎなのでは

まだ歴史が浅いとはいえ、やっぱり国際大会としては「ルール面でまだまだ整備が必要だよな」って思います。

プールごとに格差がありすぎ

どう考えても2次ラウンドの格差がありすぎ。

  • プールE:日本、オランダ、イスラエル、キューバ
  • プールF:ドミニカ、プエルトリコ、アメリカ、ベネズエラ

もちろん、地域的に近いところやったほうがいいってのはあるのかもしれないけれど、野球の強豪国ってなんだかんだいっても北中米あたりが強いわけですよ。だからプールFが「死の組」になるのは言ってしまえば当たり前だし、あの顔ぶれなら日本がプールEを抜けるのは当たり前でもある。

正直言って日本がプールFに入ったら全勝するビジョンはまったく見えませんが、全敗するビジョンなら見えます。

メキシコが最下位で1次ラウンド落ちというのも今回なかなかの衝撃でした。カナダだってプールAやBであれば勝ち抜けできた可能性は大いにあります。1次ラウンド、もしくはせめて2次ラウンドから地域的にミックスしてみてほしいな…というのは正直なところ。

試合日程によって有利不利がありすぎる

これは「肩は消耗品」という考え方のMLBの意向もあってのことだからしょうがないんだけど、この大会には「球数制限」ってのがあります。

  • 50球以上投げた場合、登板間隔を中4日空ける。
  • 30球以上投げた場合、登板間隔を中1日空ける。
  • 球数に関わらず連投した場合は、登板間隔を中1日空ける。
  • 球数制限
    • ファーストラウンド 65球
    • セカンドラウンド  80球
    • 準決勝・決勝    95球

出典:http://www.tbs.co.jp/wbc/rule/

つまり、連日試合があるチームほど不利なんですよね。

たとえば、このルールでは3連投が絶対にできない仕組みになっています。したがって、予選が同じ3試合でも、間に1日オフがあるチームよりは3連戦のチームの方が圧倒的に不利になります。

3/7 3/8 3/9 3/10
日本 対キューバ 対オーストラリア (休み) 対中国
キューバ 対日本 対中国 (休み) 対オーストラリア
オーストラリア (休み) 対日本 対中国 対キューバ
中国 (休み) 対キューバ 対オーストラリア 対日本

実際、このルールで不利な状況に置かれたのがオーストラリアでした。日本戦では途中までかなり接戦でしたが、オーストラリアは投手を温存したせいで負けてしまった一面もあります。

>外部リンク:オーストラリア指揮官が日程に不満「日本とキューバは休みがある…」|Baseball King

日本の準決勝だって同じことです。準決勝以降の日程を見てみましょう。

  • 3/20:準決勝(オランダ 対 プールF1位)
  • 3/21:準決勝(プールF2位 対 日本)
  • 3/22:決勝

3/20に40球投げた投手は決勝戦でも投げることができますが、3/21に40球投げた投手は決勝戦で投げることができません。つまり日本はある程度準決勝で投手を「温存」することが求められるわけです。同じ準決勝なのにこの差はなんだ!?という話ですね。

このように、日程で明らかに有利不利が別れてしまうというのは、あまり芳しいとはいえません。その辺の調整、もうちょっと考えたほうがいいんじゃないかなって思います。

守備イニングの数え方でゴタゴタ

総当りのリーグ戦で勝敗数が並んだとき、サッカーなら得失点差、バドミントンならマッチ数やゲームカウントで順位を決めます。

で、野球は現行ルールだと、勝敗数で並んだときは失点数を守備イニング数で割って、1イニングあたりの失点数を計算するんです。

しかし野球特有のルールとして「9回裏の攻撃がない」「サヨナラ勝ち」などがあります。それによって攻撃回数と守備回数が不均等になってしまうことが問題となっています。

プールDではベネズエラ、イタリア、メキシコの3チームが1勝2敗で並びました。で、当初発表された計算結果がこれです。WBCの公式ツイッターでも2位イタリア、3位メキシコでプレーオフを実施すると発表されたんだそう。

失点 守備イニング 失点/守備イニング 順位
イタリア 20点 19回 1.052点 2位
メキシコ 19点 18回 1.055点 3位
ベネズエラ 21点 19回 1.105点 4位

https://baseballking.jp/ns/108150 をもとに作成

今回、メキシコ代表はイタリア代表に9回サヨナラ負けをしていますが、その「サヨナラ負け」をした9回は3アウトまでいかずに試合が終わったってことになる。

「3アウトまでいかなかった回を守備イニングとして数えるのはおかしいだろう、あの試合メキシコは8イニングしか守っていない」という議論が 試 合 後 に 勃発し、結果的に発表が覆りました。メキシコは最下位転落です。

>外部リンク:まさかのどんでん返し!プレイオフのカードがベネズエラとイタリアに変更|Baseball King

いやいや、守備イニングの数え方すら大会前に決まってなかったんかーい!!!!って思いました()それって国際大会としてどうなのよ、と。

メキシコ代表の人たちにとっては気の毒としか言いようがない結末でした。

今後に期待

とはいえまだ第3回大会。こういうルールや制度面も少しずつ洗練されていくでしょう。「野球のトップリーグはアメリカMLB」ってのはいまのところゆるぎのない事実だと思うから、あと考えるべきなのはこういう国別対抗戦がいかに盛り上がるかってことですよ。

これだけアメリカやドミニカが本気になってきているので、野球がスポーツとして存続できるかは制度面の整備にかかっていると言ってもいいレベル。

あとは、WBCとオリンピックの棲み分けをどうするのか(MLBがオリンピックに価値を見出すとは考えにくい)という問題もありますが、とりあえずWBC自体は盛り上がってきているのはいいことだと思います。

オリンピックとの棲み分けは、ワールドカップとオリンピックをうまくわけているサッカーや、オリンピックイヤーに世界選手権を実施しないバドミントンなど、他の競技にヒントがあるんじゃないかな。

きょうの ぼうけんは ここまで
イエローでした~

*1:http://nanhurue.doorblog.jp/archives/24935048.html

*2:「(空間的な)離散」のこと。ユダヤ人はネーションとして特定の国をもっておらず、その実現のためにイスラエルが建国された節がある。