帰国子女に聞いてみた!意外と知らない「青」と"blue"について【言語学の入り口】

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アローラ!イエロー(@inahime_poke)です。

12月はコラボ月間です! そして今回はその第2弾です!ありがとーう(*´艸`*)

突然ですが、あなたは信号機の色を3つともいえますか?

赤信号、黄信号、そして青信号ですよね。…ところで、青信号って言いますけど、あれどう見ても「緑」ですよね?青なのか緑なのかはっきりしろよ!ってぼくなんかは思うわけです。

同じように、以前このブログで「青」のつく四字熟語に関して書いたことがあります。そのときに、四字熟語でつかわれてる「青」が、わりと生命力を感じさせる意味合いで使われていることに驚きました。たとえば「冬夏青青」なんてそうです。

どんなときも変わらない固い信念のこと。
固い信念を一年中緑色の葉をつける常緑樹にたとえたもの。

引用元:http://yoji.jitenon.jp/yojib/840.html

なんと常緑樹の色を「青」で表すわけです!おれ日本語全然知らんかったわ!

さて、こんな感じで、いまわたしたちが「青」と聞いて思い浮かべるイメージと、古典中国語やその影響を受けて派生した昔の日本語の「青」って、結構ズレてませんか? いまの「青」から連想するものってむしろ「英語のブルー」に近いような…。ついつい気になったので検証を行いました。…え?どうやって検証するかって?

小4までイギリスで育った某リア友氏に登場してもらうんですよ!!!

リア友氏の紹介

ぼくの同級生です。小4までイギリスで育っています。だから、初めてプレーしたポケモンは英語だったそうです。ピカ版を英語でやってた同級生…。しゅごい。学校内でも成績上位層だったハイスペックお兄さんです。卒業後、何人かで遊びに行ったり、2人で話したこともありました。

学校の勉強に限らず、なにかを一度やりだすとドはまりして一気に集団の上位層へかけあがっちゃう人ですね。アイドルにハマると振り付けも歌詞も曲も全部網羅するし、スイッチが入るとホント凄いです。注意力散漫でいろんなものに手を出すぼくとしてはすっごく見習いたい存在。

そして知性だけではなく良心も兼ね備えている。そんな素敵な某リア友氏が質問に答えてくれたので、ほとんどそのまま引用してみたいと思いまーす!

"blue"について

彼の文章を読ませてもらったんですけど、大きくわけて2つに分類されるっぽいです。

その1(「青ざめる」色)

blueね。色としてはもちろん想像してる青色よね。まぁ単にblueっていうと藍色とかに近いイメージだけど。

使われ方は…生命力を感じさせるというと違うなぁ。

日本でいう草木の青さはあくまで緑を表現してるものやと思うから、生命力を感じさせるというのは間違いないかもしれないね。

むしろ白色人種の多い国でできた言語だからか「blue=青ざめている」って意味が根底にあるっぽい使われ方が多いね。

例えばblue babyなんかは心臓が悪く生まれて来た子供を指してるんだけど、blue skinって呼ばれることもあるしね。青がいい意味で使われてはいないかな。

blue on blueとかも意図的ではないとはいえ結果的に味方を殺しちゃうことで、殺した側も殺された側も顔が青ざめるってイメージからだと思うんだよね。

あと、blueは寒さを表す色でもある。サーモメーターとか見ても青いとこは温度が低いし、そんな感じ?特にgo blueってもう寒くて息もままならない状態になることなんだよね。死にかけて顔面蒼白ってイメージだと思うし、これも青ざめてる様子からかしら。

あと日本の人はあんまり知らないんじゃないかなって思う使われ方としては、セクシュアルなイメージかな。blue storyとかblue jokeとかって要は性的な話とかジョークなんだよね。これも、見たり聞いたりした相手が「青ざめる」ってとこから来てると思うよ。

うーんblueといえばこんな感じ?

日本語だと「草木が青々と茂ってきた」なーんて言いますが、彼の話を聞いていると "blue" にはそういう生命力を感じさせるイメージはなくて、どっちかというと、血の気が引く、寒い、といった生命力とは逆の意味を持たされているように思います。

そしてそこから派生して性的な意味まで持たされていたとは…驚きでした。続けてこんなことも言ってくれています。

あとBluesね。ブルース音楽とかはやっぱり憂い(ブルーな気分っていうよね)が語源になってるとかなんとかいう話も聞いたことあるよ、曲調とか考えても個人的にそんな気はする。
憂いのブルーもやはり生気をなくした人の顔に対して青ざめた顔って表現としてblueってのを当てはめてる気がするね。

その2(空や海の色)

今パソコンでぱらぱらっとblueのつく単語とか成語調べて見たけど、out of the blueって言って、予期せず、みたいな意味もあるみたい。これはむしろ空とか海みたいな自然を青に捉えて、自然外のことだって意味だろうね。当時小学生だった私はそんな粋な言葉遣い知らなかった。笑

1つ目が「青ざめる」色だと要約されるとすれば、2つ目は「空や海」の色だと言うことができそうです。

ちなみにオックスフォードの英英辞典(オンライン版)も参照してみたんですけど、やっぱり同じようなことが書いてありました*1

「青」について

"blue" からは生気が抜けたような青、自然の青もイメージできることがわかりました。これは現代の日本人でもイメージしやすいんじゃないかなーと思います。しかしそこから派生した blue on blue, blue joke のような用法はやっぱりイメージできません。めっちゃ新鮮です。

今度は「青」についてもう少し調べてみます。「青」のつく四字熟語を見ると、冒頭であげた「冬夏青青」の他にも「郁郁青青」「万古長青」のように、常緑樹の色を「青」と表現する四字熟語が今日に伝えられています。また、それだけでなく「まだまだ青い」「青二才」「青春」のように、未熟であることや若い様子を表したりもします。手元の『全訳 漢辞海』という漢和辞典で成り立ちを見ると、「ものが生じる」という意味を持っているようです*2

これらのことから、ものが生まれてから若い時期あたりを指す。そんな意味合いを持っていることがわかります。

この差異を、言語学の力を借りて説明する

さて、ここで言語学の話です。

われわれを取り巻く「現実」は、言葉があってもなくても存在しています。言語langageには、目の前の現実を切り分けてカテゴリー化してくれる役割があります。しかし日本語、英語、フランス語、中国語といった言語langueによって、どう切り分けるかが全然違います。

言葉以前の現実は混沌とした連続体であって、私たちは自国語の意味体系のおかげで、この連続体の適当な個所個所に境界線を画することができます。ところが、言語によって意味体系が異なるのですから、言語が変れば区切り方も変ってくるのは、当然でしょう。

引用元:丸山圭三郎『言葉とは何か』94頁、ちくま学芸文庫、2008年。

では、日本語の「青」と英語の"blue"は、それぞれ現実をどのように切り分けているでしょうか?

  • 共通点
    • 空や海の色、自然の色
  • 相違点
    • "blue":性的ジョーク、顔面蒼白、寒さ、憂鬱といったイメージ
    • 「青」:常緑樹のような生命力、緑に近いイメージ

"blue" と「青」は1対1で対応していないということです。以下、もう少し詳しく見てみます。

連辞関係

リア友氏の話からは"blue"のさまざまな意味を教えてもらうことができました。ところで、気づいていたでしょうか。彼は他の語とくっつけて用例を説明してくれていました。たとえば、 blue baby, blue skin, go blue, blue story, などなど。

単に "blue" だけだと彼の言うように「藍色に近い色」をさすだけになります。

しかし、その前後にどんな語をくっつけるかで "blue" という語の意味が規定されています。こういうのを連辞関係というんだそうです*3

今日でも「青信号」「青菜」のように、「緑」のものに対して「青」という語を当てることもあります。したがって連辞関係のレベルではたしかに日本語の「青」と"blue"に差はありそうです。続いて「音」に注目してみます。

シニフィアンとシニフィエ

自国語しかわからないロシア人、ブラジル人、日本人がいるとしましょう。

「アオ」という物理的な音を全員が聞いたとしても、その音を意味のあるものとして聞き取り、青色を思い浮かべるのは日本人だけだとおもいます。この「意味のある音」をシニフィアン、その言語表現による意味の内容をシニフィエと言うそうです(ここは難しいです…)*4

ここで「アオ」というシニフィアンが与える意味(シニフィエ)は社会的に決定されます。古典中国語の「青」から出発した日本語の「青」は、シニフィエのレベルではいまや英語の"blue"に随分と近づいているのではないかと思います。

いままで「青」とよばれてきたものの一部は「緑」に取って代わられているように見えます。つまりぼくが冒頭で言ったように「青信号って緑色やんけ!」ってのがそうです。

総括

今回の「ネタ本」的なのは丸山圭三郎さんの著作でした。丸山圭三郎って高校の現代文やってると絶対見かける名前ですよね! あれ、そんなことないですか? 丸山圭三郎さんはソシュールの研究者で、日本の言語学者の中でまず名前の挙がるような人。日本語で言語学の本を1冊読むなら間違いなくこれ。頁数は多くないのに内容はかなり濃くて、何度も読み返す価値のある「古典」だと思います。

言葉は、それが話されている社会にのみ共通な、経験固有の概念化・構造化であって、外国語を学ぶということは、すでに知っている事物や概念の新しい名前を知ることではなく、いままでとは全く異なった分析やカテゴリー化の新しい視点を学ぶことにほかなりません。

引用元:丸山圭三郎『言葉とは何か』17頁、ちくま学芸文庫、2008年。

外国語を学ぶことで、自分の知らない「現実の切り分け方」を知ることができる。その意味で他言語を知るということは刺激的ですよね!

ぼくが今回コラボ企画をしている理由の1つは「おもしろい!」にいっぱい出会いたいからです。実は某リア友氏はずーっと前にこの話を書いてくれていたのですが、コラボ企画までこっそりあたためていました。改めて、ご協力してくれた某リア友氏には本当に感謝しています!!ありがとうございました(。>﹏<。)

最後に。ぼくはもともとは歴史学の人間なので、言語学は大学の講義で1年間勉強したぐらいです。だからこの記事は、言っちゃえば趣味みたいなもんです。しかし、趣味とはいえども愛智(フィロソフィア)の精神はもっているので、大学の課題レポート程度のレベルにはしあげたい。そう思って書きました。記事不満があるようでしたら日本の一級の言語学者の本を読むことをおすすめしておきまーす。

最後にテストです

  • blue baby
  • blue on blue
  • go blue
  • blue story
  • out of the blue

全部リア友氏が挙げてくれた言い回し。どんな意味か覚えてますか?この5つの用例だけでも「外国語を学ぶっておもしろいなあ」って思います。…はい、覚えてないアナタはもう1回冒頭へどぞ!

きょうの ぼうけんは ここまで
イエローでした~

*1:http://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/blue_1?q=blue

*2:戸川芳郎監修『全訳 漢辞海 第二版』1541頁、三省堂、2006年。

*3:連辞関係について、丸山圭三郎による厳密な定義付けは、以下を参照のこと。
丸山圭三郎『言葉とは何か』76-78, 191頁、ちくま学芸文庫、2008年。

*4:丸山圭三郎『言葉とは何か』76-78, 197頁、ちくま学芸文庫、2008年。